月下尾花図 酒井抱一筆げっかおばなず さかいほういつ

  • 江戸時代
  • 18-19c
  • 絹本著色
  • H-98.9 W-40.1

旧暦8月15日は仲秋の名月。この時期、台風や霧雨で空気が湿ったり、小雨の降ったあと、移動性高気圧におおわれて晴れた夜間に冷え込みがあったりして、霧が発生しやすい。「十二カ月花鳥図」のようにとりどりの秋草や虫などの小動物も描かれていないが、たらし込みの技法で描かれたススキに、夜霧に浮かぶ名月を取り合わせ、俳諧にも親しんだ抱一らしい、しっとりとした詩情に充たされた作品である。

酒井抱一

 1761~1829(宝暦11~文政11)。江戸時代後期の琳派の画家。姫路城主、酒井忠以の弟として江戸に生まれた。多種の才芸に富み、書、俳階狂歌にも長じ、涛花・杜陵・屠竜の別号がある。画は初め浮世絵や狩野派、円山派、土佐派など諸派の画風を広く学んだが、尾形光琳の作品に感動しその芸術の再興を志した。草花図を得意とし、深い観察力で豊かな抒情性をたたえた装飾画風を形成した。抱一は当時の文人的かつ粋人的生活を送った人で、光琳様式もその立場で解釈し、繊細、華麗な新しい画風によって光琳芸術を発展的に継承し江戸琳派を確立した画家である。宗達に始まる宗達派は光琳を経て抱一で三転したといえる。

琴高仙人図(酒井抱一筆)