風柳蝉蝶図(伝・馬和之筆)ふうりゅうたんちょうず ばかし

  • 中国・南宋~元時代
  • 13c
  • 絹本著色、団扇形
  • H-22.7 W-23
  • 所蔵
    重要美術品

 柳の枝にとまる蝉と風にあおられて舞い上がる蝶を一図に収め、風に翻る柳葉の軽やかな動きが涼味を増す。蝶の触角の細くてのびやかな線といい、柳葉の波打つ勾勒線といい、材質に応じた表現力は宋代写生の至妙の技を伝える。また風を主題に数少ない画材を有機的につなぐ構成力も見事である。南宋後期の画院画家の手になる草虫図の優作である。

 柳の枝にとまる蝉と風にあおられて舞い上がる蝶を一図に収め、風に翻る柳葉の軽やかな動きが涼味を増す。蝶の触角の細くてのびやかな線といい、柳葉の波打つ勾勒線といい、材質に応じた表現力は宋代写生の至妙の技を伝える。また風を主題に数少ない画材を有機的につなぐ構成力も見事である。
 旧に南宋初期の画院画家、馬和之の作と伝えるが、署名は無く、その伝称に重きを置くことはできない。恐らく後期に下るとはいえ、画院系の画家の手になる草虫図の優作であるに間違いない。
 「黔寧王子子孫孫永保之」白文方印と「邑之清玩」朱文方印、およびかすれて文字の読めない印が押されている。「黔寧王子子孫孫永保之」印は明、太祖の養子で黔寧王に追封された沐英の曾孫、雲南総兵官、沐 (字は廷章、天順初めに卒)の鑑蔵印とされる。この印はフリア美術館の閻次子筆山村帰騎図、ボストン美術館の夏珪筆風雨舟行図団扇、上海博物館の米 行書多景楼詩冊等、宋代書画の名品多数に認められ、明初の文人画家、王に絵を求めて閉口させた沐氏一族の書画愛好のほどが偲ばれる。