庭園図ていえんず

  • ローマ
  • 1世紀
  • フレスコ・セッコ
  • 縦:139.7㎝-162.9㎝ 横50.2㎝-114.9㎝

フレスコ画とは、漆喰を塗り、その漆喰が「フレスコ(新鮮)」である状態で水または石灰水で溶いた顔料を用いて描かれたものである。青い顔料は、高価の貴石が原料となっていたため非常に高価であった。
このフレスコは、「パクス・ロマーナ」ローマの平和と言われた時代に、ローマ人が憧れた楽園の姿が「窓からみた、花咲き乱れる美しい庭」として描かれている。また、窓枠の描かれ方からヴェスヴィオ山周辺のカンパニア地方の代表的な工房で制作されたとされる。
左右には勝利と不死、豊かさの象徴であるナツメヤシが、下葉がかられ常に繁茂し続ける様子で描かれている。白い花のギンバイカは古代ローマでは愛と美の女神ウェヌスに捧げる花とされ、結婚式などの飾りによく使われるので「祝いの木」ともいわれていた。赤い花はセイヨウキョウチクトウである。当時の列柱式庭園では原則として飾られていたオッシラと言われる飾りや花綱が吊り下げられている。画面中央上のオッシラには演劇のマスクが描かれている。演劇は特権階級に許された娯楽の一つであった。花綱には赤いギンバアイカで作られている。中央下方には噴水が描かれており、その下にはスフィンクスが描かれている。このスフィンクスはライオンの身体、美しい人間の女性の顔と乳房のある胸、鷲の翼を持っている。また、遠景を霞ませて表現する空気遠近方法や窓枠の線を画面中心に向けて描く遠近法も使われている。

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