大きなお釜のふたを開けると、ごはんの湯気がいっぱいに拡がる。手も顔も真っ赤にしながら、ふんわり握るあったかいおむすび。海苔の香り、胡麻、塩、梅干、佃煮、味噌と地物の野菜。あたりまえだけど一番おいしい、それがMIHO MUSEUMのおむすびです。

そのあたりまえのなかに、一言では語り尽くせない世界があります。

お米は全国から集まってきます。どれも1990年代の終わりごろから農薬・肥料を使わない秀明自然農法を長年続けている、貴重なお米ばかりです。



海苔は、東京の老舗寿司屋が使う本場仕入れ。

塩は沖縄・宮古島の海水を、天日と釜で煮上げて作った手造り塩。

梅干は、梅・紫蘇・塩を持ち込んで、漬けて頂いた特別製。

味噌・醤油も、大豆、塩、小麦を持ち込んで、作って頂いた特別製。

それぞれの原料である梅、紫蘇、大豆、小麦なども秀明自然農法で栽培されています。

胡麻は、ごみや形の良くないものを、手作業で取り除いた粒揃い。

醤油と炊き合わせる佃煮は、筍、茄子、たらの芽、ふきのとう、ふきなど様々、味噌には刻みねぎを香り高く合わせて、胡麻をまぶしたおむすびに。古代米のおむすびは、塩味だけで召し上がって頂きます。

そして全部の材料が、正真正銘、農薬、肥料、化学合成添加物を使っていない代物です。

塩の故郷、沖縄・宮古島の海

こんな材料ばかりだから、おむすびを握る職人は、こう思うそうです。やさしく握ろう、あったかい内に食べてもらおう。海苔も胡麻も塩も野菜も、全部の味を感じてもらおう。ほわほわの内に、ぱりぱりの内に、しゃきしゃきの内に、まったりの内に、香りを全部吸い込んでもらおう。ごはんがお口に留まって、他の味といろんな和音を奏でていく、そのためにお米はふっくら、柔らかく結ぼうと。

自分たちが届けるのは海や土の息吹、作物たちの命、育てた人の心、携わったみんなの思いだから、全部一緒に優しく結んで、お客様に供します。

さて、1990年代初頭、MIHO MUSEUM に形を与えた建築家ペイさんが、この山を訪れました。人跡未踏のこの地に初めて、人が作った細い道。山越え谷越え辿り着いた頂上で、出てきたお昼は竹の皮に包まれたおむすび。いつか美術館が建つのだと、夢膨らませて頂いたおむすびのように、多くのひとたちの願いが結ばれて、MIHO MUSEUM は誕生しました。

現在、朴の葉を象った器に盛ったおむすび膳は、レストラン ピーチ・バレイで多くのお客様にお愉しみいただいています。ピーチ・バレイ、すなわち桃谷とはペイさんがこの山の上でふと思い出した“桃源郷”のこと。このあったかいおむすびの中に、MIHO MUSEUM の種が、そっと結ばれているようです。

  • 網に海水を伝わらせて10日から2週間、太陽熱と風によって海水の濃度を上げる。
  • 大釜で7時間ほど炊く。後半はまろやかな塩にするために、混ぜ続ける。
  • 3時間ほど炊いたところで、最初に結晶するアクやゴミを布で濾し取り、更に炊き続ける。
  • 結晶した塩を、袋に詰めて、脱水すれば出来上り。