仏立像ぶつりゅうぞう

  • ガンダーラ
  • 2世紀後半
  • 片岩
  • 高:250cm

アレクサンドロス大王の東方遠征によりインド周辺にギリシアの技術や文化を持った人々が定住するようになりやがて、ギリシアのみならずイランやローマと様々な文化が、交易によって伝播された。イラン系民族によって建国されたクシャーナ朝が、仏陀の姿を人間の姿で現す、ガンダーラ美術を花開かせ。初期の仏陀はギリシア風の彫りの深い顔立ちで衣をまとっており写実的で理想的な人間像として仏陀の尊さが現されていた。
この仏立像の像高は 2.5mであり、大きさではガンダーラ様式の仏立像としては最大とされる、サハリ・バハロール出土の頭光を含めた像高 2.64mの仏立像(ペシャーワル博物館所蔵)に匹敵するものと思われる。その像容は、ペシャーワル仏の強いヘレニズム様式に対し、幾分の様式化が見られる。この像はヘレニズム彫刻の伝統をふまえつつも、人間的表現を超えた造形を目指していたことを窺わせる。特にヘレニズム彫刻ではあり得ない上下瞼の顕著な突出は、その眼差しと全体の雰囲気に得も言われぬ神秘性を与えている。
この像には後世大智度論にまとめられた仏の三十二相の要素がある程度見いだされる。具体的には、手足指縵網相―この像の左手の親指と人差指の間の膜表現、大直身相―身体が広大端正、肩円満相―肩の相が丸く豊か、頂髷相―肉髷、白毫相、など10近くが挙げられる。今は失われている 90°に肘を曲げた右手は、指先を上にして掌を前に押し出す所謂
”施無畏印 ”を作っていたと思われる。この印相は仏像のものとしては最古のもので、人々の恐怖心を取り除くという意味を現している。
MIHO仏立像は直立してはいるが、微妙にうつむく姿勢をとっている。祈りを捧げる礼拝者をやさしく迎え入れる心の現われであり、同様に畏れを取り除き心を通わせる施無畏印、ほほえみを感じさせる眼差しと口元などとともに、全てをひきうけるかの円満広大な挙身の雰囲気を醸し出しているのである。

南アジア一覧へ