秀明自然農法で育てたコーヒー豆、濃い目の焙煎17gで100ccのエスプレッソが取れます。このコーヒーとブランマンジェ、そしてカフェオレを重ねると、大人のエスプレッソ・ゼリーの出現です。

美しい4層のグラスは、カフェオレから始まります。やさしくほろにがいコーヒークリーム、その下には透明な苦さのエスプレッソ。ちょっとほほを歪めて味わった後には、真っ白なブランマンジェが待っています。ほろにがさを忘れさせ、やさしく、甘く、やわらかく包み込んでくれる魅惑の時間。赤ちゃんに戻ったような心地よい温かさが、口の中に広がります。そして・・・、あっと突き抜ける鮮烈な香り。最下層の純粋なコーヒーが、大人の自分を思い起こさせる、いや初めてコーヒーをおいしいと感じた、あの青年の日の瞬間でしょうか。これこそがエスプレッソコーヒー、一切雑味のない風のようなさわやかさ。そう、これらがグラスの中で、ゼリーとなったのです。

こんな風に重ねていきます。

ある日MIHO MUSEUM に、南米ブラジルから、待ちに待ったコーヒー豆が届きました。それは農薬も肥料も一切使わないコーヒーの木から収穫した、まさに自然の味のコーヒーでした。美術館棟内の“パイン・ビュウ”は秀明自然農法の食材を使用したメニューが自慢のカフェ。けれども、この農法でコーヒーを作れる農家には、なかなか巡り会えなかったのです。

長年の夢のコーヒーは、透明感のあるすっきりした味わいです。これで本当にピュアなおいしいコーヒーをやっとお客様に味わって頂ける、と大喜びした瞬間に、ふとアイデアが頭をよぎりました。これで大人のお菓子を作ったら・・・。ちょうど沖縄からは、秀明自然農法の砂糖の品質がどんどん向上して、洋菓子向きの砂糖が届くようになっていました。

さっそくMIHO MUSEUMの菓子職人らは、思い思いのアイデアで試作を始めました。エスプレッソ・アイスクリーム、エスプレッソ・シュークリーム、エスプレッソ・プリン・・・。それぞれの職人が取り組む中で、一人が、エスプレッソのゼリー液を作ってみました。ミルクに砂糖とゼラチンを溶かし、クリームを加えてブランマンジェにしました。白いブランマンジェに茶色のゼリー液を加えると、カフェオレになりました。重ねてみたらどうかしら?

巨大な冷蔵庫、ピーンと張り詰めた冷気の中で、磨いたグラスに注ぎ込みます。最初に1層、2時間後に2層、味のバランスを想像しながら流し込む厚みを考え、下のゼリーが固まったら上のゼリーを足していきます。ようやく6時間後にお目見えしました。そして・・・「いけるぞ。コーヒー、砂糖、クリーム、ミルク、たったこれだけの組み合わせなのに、なんて絶妙なハーモニー。」大成功でした。

いい材料のシンプルな組み合わせ、おいしいものが出現するときは、こんな風なのだそうです。神様が作らせて下さったゼリー、菓子職人はふとそう思ったとか。

3種類のゼリー液です。

「ガラスに付かず、きれいに入ってね。おねがい・・・」

表面を平らにするため、瞬間的にバーナーで加熱。