銅法華寺花入どうほっけじはないれ

  • 室町時代
  • 15c
  • 銅鋳製
  • H-28.8 D-14
  • 所蔵
    法華寺伝来

 口縁がラッパ状に広がり、胴に膨らみをつけて、円筒形の脚と蓮華座を備えた形姿で、膨らんだ胴部に牡丹唐草を大きく鋳出しているところが特徴的である。
 銅鋳製で、底も共鋳でつくり出し、底裏には鋳肌がそのまま残っている。また、牡丹唐草の四枚の葉の一枚に一文字ずつ、あわせて「正中二年」、また同様に四方に配された花に「京法華寺」の各一字が刻まれている。
 本品の形姿や装飾は、中世以降に中国から大量にもたらされた青磁器のそれに倣ったものと考えられる。やや生彩を欠く牡丹唐草の表現や、鋳上がりのあまさなどから、刻銘にいう正中2年(1325)を制作年代とすることにはやや躊躇を感じるが、蓮弁の重厚なつくりや底裏の鋳肌からは、近世に降る要素も認められない。
 この形式の花瓶は、俗に「法華寺形」とも称され、遺品は他にも散見される。兵庫・白鶴美術館には本品を凌ぐ遺品があり、また法隆寺(聖霊院)には本品とほぼ同時期と目される遺例がある。
 なお、鎌倉時代末期の元亨2年(1322)ころの法華寺における年中行事を記した文書である『法華滅罪寺年中行事』によれば、当時の法華寺に、金堂・講堂・桜梅宮・惣社・薬師堂・法花堂・学問所・護摩堂・松南院が存在し、年間を通してさまざまな法会や多くの人々の忌日法要が営まれていたことが知られる。本品は、そうした活発な宗教活動のなかで、仏前に供える供養具として調進されたものであろう。