黄伊羅保茶碗 銘 常盤きいらぼちゃわん ときわ

  • 朝鮮王朝時代
  • 17c
  • 高麗茶碗
  • H-7.5 D-15
  • 所蔵
    三井家伝来

 高麗茶碗は、井戸に代表される何の作為もない素朴な茶碗と、伊羅保のような日本からの注文品のタイプとに分けられる。伊羅保という名は、ざらついた肌がいらいらしているところからついたという説もあり、素地は褐色の砂混じりの土で粘りけがある。伊羅保は一見無作為のようだが、釘彫り様の箆目をつけたり、釉を掛け分けて見どころを意識的に作ったり、茶の湯で用いやすいように様々な工夫が施されている。少しの傷や繕いも無いことが伊羅保の一つの約束にもなっている。この茶碗は黄伊羅保の中でも本手と言われるタイプで、やや濃いめの黄釉が高台脇まで掛けられ、口縁には切廻しがあり、やや端反りでべべらがある。高台はやや低く竹節状をなしている。大小の石が姿を見せ、佗びた風情で見どころの多い茶碗である。三井家伝来。銘の「常盤(とこは)」は、万葉集、元正天皇の御製「橘は実さへ花さへその葉さへ 枝に霜降れどいや常葉の樹」の「常葉」を「常盤」に掛けていることが記されているが、詳しくはわからない。