ファラオ頭部

  • エジプト
  • 紀元前15-紀元前14世紀
  • 前664年以降
  • ファイアンス、ガラス製
  • H-15.3 W-11.5

 優雅な輪郭の横顔を表現した青緑色のファイヤンス。前頭部から首にかけての形状と、こめかみから顎に伸びる溝から、王冠をかぶり儀式用の付け髭をつけた王を表したものであることがわかる。目、眉毛、付け髭の紐の部分に彫られた溝には、ガラス質の物質を嵌め込んだ。目の部分に緑色の縁取りと白色の眼球の象嵌が残っている。別作りの王冠や付け髭と組み合わせて、神殿の壁面などに嵌め込まれたのかもしれない。このようにいくつかの部分を組み合わせて構成された人物像は第18王朝から知られているが、その後も長い期間にわたって作られた。

ファイアンス

古代エジプトで、石英の粉末を固めて胎とし、色釉をかけて焼成したやきもの。古代エジプト語ではチェヘネトといい、ガラスの呼称と同じである。杯や鉢、ビーズ、護符、動物像、象嵌用部品など各種の製品がある。エジプトでは、一般にガラス質のソーダ釉が用いられたが、これは粘土の胎に適さず、この技術の発達をみた。先王朝時代(前6000頃-前3100頃)に始まり、王朝時代の全時期を通じて行われ、ローマ支配期以後に及ぶ。

Catalogue Entry

This beautiful inlay head would have formed part of a larger composition (such as a furniture panel or wall of a shrine) made of contrasting materials that fit together like the pieces of a jigsaw puzzle.1 The outline of the top of the head shows that the subject wore a king's crown. The incised line running from the sideburn to the chin, once inlaid (as were the outlines of the eye and eyebrow, the eye itself being made of a white frit within a glassy green border), indicates a strap for the attachment of a false beard. Such composite figures first appeared late in the Eighteenth Dynasty, the best-known examples being the figures on the back of Tutankhamen's golden throne. The technique, however, persisted long afterward. The composition of the faience used for this elegant inlay, however, as well as its coloration, suggest a later date.
LMB


1. Ex collections: Omar Pasha Sultan, Cairo; Norbert Schimmel, New York. Exhibited: Cleveland, 1974, The Cleveland Museum of Art (also traveled to Dallas, New York, and Jerusalem); Berlin, 1978, トgyptisches Museum (also traveled to Hamburg and Munich). Publications listed above.

解説(春の玉手箱)

 この気品に満ちた横顔は、象嵌用の嵌め具で、異なった材質で作られたものをジグソーパズルのように組み合わせて作られた、より大きな調度品のパネルや神殿の壁画のようなものの一部であったとみられている。頭頂の輪郭線は、王冠をかぶっていたことを示している。もみあげから顎に走る鋭く切り込まれた線は、かつては象嵌されていたもので、付け髭を留めるための紐を表している。材料のファイアンスは石英の粉末を固め、色釉をかけて焼いたもの。周囲の装飾がない分、シルエットの美しさが際立つ。額から顎にかけて流れるライン、鼻梁と唇、かすかな頬のふくらみ等、わずか数ミリの起伏による表現とは到底思えない。断片ながら、エジプト彫刻の水準の高さを凝縮した作品である。