宝冠仏立像ほうかんぶつりゅうぞう

  • タイ/カンボディア
  • 12c
  • 青銅
  • H-77.5

宝冠仏立像
タイ/カンボジア 12世紀
 クメール王国は東南アジアの中心部に6世紀頃興隆し、当初からヒンドゥー教と仏教が並存していました。9世紀頃から神王の信仰が興り、やがて王をヒンドゥー教の神の姿に表した宝冠を被った聖像が作られるようになりました。有名なアンコール・ワットは12世紀に建立されたヒンドゥー教寺院ですが、後の王によって大乗仏教が隆盛となり、後世仏像もそこに置かれるようになりました。そして王は仏王と仰がれ、宝冠を戴き宝飾品を着けた仏の姿が作られるようになったのです。この青銅製仏立像は、無駄なものを取り去った優美な姿態に、大変精緻な装飾を施した宝冠を戴き、耳飾、胸飾、腕輪を着け、宝帯を締めた衣を着ています。これらの様式を持つ宝飾品を着けた姿はアンコール・ワットの壁面に刻まれた王の姿ものそのものですが、両掌を垂直に立てて前に突き出す施無畏印、そして下端が両脇に翻る薄い衣を垂らす要素は7-8世紀頃から見られるクメールの仏像様式を受け継いでいます。その両掌には法輪が刻まれ、この像が仏を表していることを示していますが、その眉間にはヒンドゥーの様式に由来する第三の眼がつけられています。この像にはかつて多くの宝石が嵌め込まれていたと考えられ、大変きらびやかな聖像であったと想像されます。