象と鯨図屏風 伊藤若冲筆
- 江戸時代
- 18c
- 紙本墨画 六曲一双
- H-159.4 W-354
象と鯨図屏風 若冲ワンダーランド 図録解説
象と鯨図屏風 若冲ワンダーランド図録解説
北陸の旧家に伝わったもので、2008年夏に存在が知られた。六曲一双の左右に、勢いよく潮を吹く鯨と、うずくまって鼻を高々とあげた象とを対置させた水墨画。海の王者と陸の王者とがエールを交換しているような情景は、奇抜さを特色とする若冲の絵の中でも他に例をみない。同様な図柄の屏風が昭和初めのオークションに出たことが知られているが、この方は現在行方がわからない。
優しい目つきをした、大きな縫いぐるみのような象の体、後ろの崖から伸びた牡丹の花が、優しく背を撫でている。外隈で表された輪郭線のない鼻は、まるで玩具の「吹き戻し」のようだ。一方、黒々とした鯨の胴は雄大で、潮吹きの勢いがすばらしい。波頭の描き方も独特である。
署名は各隻に「米斗翁八十二歳画」とあり、「藤女鈞印」(白文方印)、「若冲居士」(朱文円印)を捺す。改元一歳加算説に従うと、八十歳の作。老いて童心をますます強めた若冲の動物愛が、見るものの心を和ませる。
象と鯨図屏風 若冲と蕪村 図録解説
象と鯨図屏風 伊藤若冲筆 若冲と蕪村 図録解説
六曲一双の屏風の右隻に陸地の王者である白象、左隻に海上の王者である黒鯨を描く。
象は先をまるめた鼻を高くあげ、耳はゆで卵を思わせる二重の楕円形、口からは太い牙が上へ向かって伸び、大きな鳴き声をあげているようだ。炬燵にも似たどっしりとした体で、大地の上に足をたたんで座り、尻尾を巻いている。一方の鯨は、大きな体の一部が海面に浮き上がり、胴からは潮が勢いよく噴き出す。波の水しぶきや鯨の背びれには躍動感がある。陸と海、白と黒、などといった対比の中に、巨大な二つの動物の呼応が生まれている。なお本作品とほぼ同じ図柄の屏風が昭和初めのオークションに出ているが(現在の行方は不明)、象の背景や尻尾の有無、鯨や波の描写などに相違がある。
詳しくは、本図録・辻論文を参照されたい。
署名は各隻に「米斗翁八十二歳画」とあり、「藤女鈞印」(白文方印)、「若冲居士」(朱文円印)を捺す。