女神坐像にょしんざぞう

  • 南西中央アジア
  • 前3千年紀後期―前2千年紀初期
  • 前3000年紀後期―前2000年紀初期
  • 緑泥岩、石灰岩、瀝青
  • 高:22.5cm 幅:16.5cm 奥行:22cm

この女神像は、緑泥岩でカウナケス(羊毛皮の衣装)をつけた体躯を彫り、色白の頭部は石灰岩で作られており、髪は漆黒の瀝青で成形し旋毛も含め毛髪の流れの一本一本が繊細に刻まれている。このような女神像は、前 3~ 2千年紀マルギアナ文化の遺跡から複数発掘されており、共通する造形の特徴は、下半身の右側に穿たれた横穴に足の爪先を嵌め込んで横座りの体勢を造りだしていることである。この像にもはり出した下半身右側に二穴があり、そこから足先を見せる横座りの女神であったことを示している。類似の横座りする女性の図像の円筒印章はその体躯から穀類の穂を放射状に発出している。これは植物神、豊穣神、復活再生の生命力の象徴であって、魔除けの意味も込められていたのだろう。かつてはこの像は石灰岩の白い両腕をひざにのせ、髪には金のヘアバンドを着けていたようである。
マルギアナの女性像は墓地の中に設えられた祠のような場所から、一組の青銅製の儀器とともに発掘された。恐らくこれも復活再生や魔除けの女神であって、埋葬の際にその前で何らかの儀式を行ったのではないか。
髪に使用されている瀝青はメソポタミアとのつながりを示しており、内刳りをして目を裏から嵌め込む技法もメソポタミアの技法の流れを思わせる。そして、頭部の造形は、マルギアナの遺跡とともに同時代地中海東岸地域のものにも通じており、前 4千年紀に遡る資源の長距離交易に負うところが大きいのではないか。

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