焔摩天像えんまてんぞう

  • 平安時代 12世紀
  • 絹本着色
  • 高さ:156cm 幅:84.0cm (本紙)
  • 重要文化財

 平安時代の仏教は、国家鎮護の役割と共に、個人の希望を叶える呪術的な力が重んじられるようになりました。焔摩天像は、そんな祈りを受けるものとして描かれ、除病、延命、息災等を祈る焔摩天供の本尊とされたのです。この図は画面一杯に像を描いてスケールが大きく、女性的なその姿は、インド密教図像の伝統を引いています。当初の宝相華文様はみやびな趣があり、やわらかな腑彩と深い思いを秘めた優美な表情は、この世ならぬ魅力を漂わせています。
 祈りを受けるその時以外は、巻き上げて大切に保管されてきたのでしょう。当時の絹本画像でこれほど生々した色彩が残っているものは、まことに数少なく、貴重な画像と言えましょう。

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