燃燈仏授記図浮彫ねんとうぶつじゅきうきぼり

  • ガンダーラ
  • 3世紀-5世紀
  • 片岩
  • 高: 69.3cm

この群像の主尊は今生の釈迦仏ではなく、釈尊が今生でさとりをひらく以前の生において、この世に現われた仏陀であり、燃燈仏(ディーパンカラ :燈明を持つ者)と呼ばれる。これはインド古来の本生譚に含まれている。前 2世紀から後 4世紀に編纂されたとされる仏本行集経の粗筋は次の様なものである。前世の釈尊はメーガというバラモン修行僧で、その世に出現した仏である燃燈仏が、王都に向かう途上に遭遇する。王もメーガも燃燈仏を歓待しようとしていた。メーガは水瓶、日傘程度しか持っていなかったが、7本の蓮花を持ったバラモン階級の少女プラクリティと出会い、そのうち 5本の蓮花を買い、燃燈仏に散華した。するとそれらが燃燈仏の身光にかかり空中にとどまった。ぬかるみに燃燈仏がさしかかった時、燃燈仏とそれに従う大勢の弟子の足が泥で汚れないよう、メーガは髷を解きうつ伏せになって髪をそこに敷いた。その瞬間彼の心の中には自身も未来に仏となれるという思いが沸き起こった。このメーガの献身を喜び、彼の心をさとった燃燈仏は、メーガが無量劫の後に仏となり人間の苦しみを軽減し、カピルヴァストゥ(サカ族の国)に生まれ釈迦牟尼仏として知られるであろうという予言(授記)を与えたのである。
この像には主尊は燃燈仏であり、これらの物語が展開しているのである。

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