精霊と従者浮彫せいれいとじゅうしゃうきぼり

  • 石灰岩
  • 高:110.5cm 幅:183cm

アッシリア王・アッシュールナシルパルⅡ世は、周辺の先進地域との交易や文化交流を進め、首都をニムルドに移し帝国の文化センターとしました。アッシリアは古代オリエント有数の大帝国となった。北西宮殿を始めとした首都・ニムルドの主な宮殿・神殿などを造営し、完成の際には約7万人が参加した大宴会が10日間催された。それらの詳細が記載されている事から、この造営事業が如何に誇らしいことであり、祝宴を含め後世に永遠に残すべきものであったかが分かる。
この浮彫は、北西宮殿玉座の間の西に続く控えの間の壁下部に飾られたもので、玉座に座った王が西扉の入口越しに真正面奥に見据える壁にあった。この壁を飾る浮彫の主題は。王が神から聖なる力を得る意味もあった儀式的なライオン狩り終了の儀式である。この浮彫は本来、右側に立つ右を向く王の左側に、王の棍棒と弓を持ち、矢筒を肩からかけて控える髭の無い従者(宦官)と、その後ろには牛角をつけた冠を被り、二対の翼を背中につけ右手にムッリム(紡錘形の球果)、左手にシトゥラ(小型のバケット)を持つ精霊が立っている。さらに、王の右側は払子と棍棒を持つ左向きの従者と二対翼をつけた精霊が球果とシトゥラを持つ場面であった。現在王の姿とその右の場面は他館所蔵し、浮彫の下半分は失われている。こうした王権(宦官)と神性(精霊)を表す従者の両方を伴う場面は、玉座の間一帯に限られ、この浮彫の重要性を示している。
この二対翼の精霊はアプカルルと呼ばれ、左手に持つシトゥラに聖水を入れ、それにムリッムをつけてふりまく浄めを行うアッシリアの守護精霊である。王はこの世の力である従者に守られ、あらゆる守護神の守護を仰いだのである。
浮彫の下部に精霊と従者を横切って、アッシリア語の碑文が楔形文字で刻まれている。ここには、宮殿の由来と建設計画、王の遠征など王の所業を高く謳いあげ、王を万能で諸神の加護のあつい、強大な世界の王であると宣言している。
この浮彫は 1845-47年に発掘されたが、大英博物館に納まった一連の浮彫と異なり、支援を親戚筋に求めた関係で、カンフォードの荘園にもたらされ、展示された。数代のちに荘園一帯がハイスクールとなり、浮彫の下部を石膏のレプリカでつくり、本体にも石膏の上塗りがされてしまった。それ故、本作品もレプリカであると長らく思われていたが1992年に、アッシリアの浮彫を研究していたアメリカの美術史家によって ”再発掘 ”された。

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