絵因果経えいんがきょう

  • 奈良時代 8世紀
  • 紙本着色
  • 高さ:26.5cm 幅:46.0cm

日本に大陸から仏教が伝わったのは、6世紀に遡ります。やがて8世紀、奈良時代になると聖武天皇は、仏教を基礎に置いた平和国家を夢見て、全国の行政区に、中心となる国分寺を建立しました。
そのような時代に制作された絵因果経は、料紙を上下の二段に分け、下段には『過去現在因果経』の経文、上段に経文の内容の絵画化が描かれています。このような形式は中国・唐時代に盛行したもので、経典の内容は、釈迦が過去世において善慧仙人という修行者として普光如来に師事したという本生から説き出され、仏陀として成道し、大迦葉を済度するところまでを説いています。唐時代の原本は残っていませんが、それに則って奈良時代に日本で制作されたもののうち、二十五行分の断簡がこの作品です。ここは、拝火教の修行者である迦葉三兄弟を教化する場面で、朝、儀式を行うために火を点けようとしますが、つかないのは釈迦の神通によるものではないかと、三兄弟が疑っている様子が描かれています。経文の筆致は、いかにも奈良朝の写経らしく謹厳で力強く、絵に施された丹朱・緑青・胡粉・群青などの彩色も大変鮮やかです。

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