にょう/どう

  • 中国 華南青銅器時代
  • 前1400-前1000年頃
  • 青銅
  • 高:73.4cm 奥行:35cm 幅:50cm

古代中国の鐘は、吊って鳴らす鍾や鎛と柄を手に持って打ち鳴らす鐃に大きく分けられる。鐃は商と同時代の長江流域に栄え、大型化したもので、開口部を上にして基壇に据えて使われた。
この鐃は発達した獣面が、上部の弧を描く開口部(于)の側面(鼓)の中央部と柄(甬)の部分に施されている。身部両面左右に9個ずつ乳房形の突起があり、その乳頭をめぐって鉤形の刻みが施されている。これらは二里頭・安陽(河南省)の獣面意匠の眼の枠に通じており、この乳房形は獣面の眼が独自に発達したものと捉えることも可能である。これは同時代の長江流域で盛行した、乳頭と鉤形の刻みのある渦巻文との関連が強いものと思われる。
渦巻文は、夏王朝の文化とその源流とされる長江文明を象徴する一つの要素であり、蟾蜍は雷神、夔龍に通じ、その背中の多数の疣はこうした自然神の力の象徴となったと思われる。また長江流域ではこのような大型の青銅製ベルがより人界を離れた山の斜面や頂上の埋納地のようなところから出土することが多い点も、こうした楽器が自然崇拝、山岳崇拝の儀式に際し使われたものではないかと想像される。
商(殷)に続く周代に、鐃はその柄の膨らんだ部分(旋)に鐶がつけられ、上下を逆に吊って音階を持った組鐘に発達した。この時、かつての渦を持った乳房形の突起は、鐘の音を整える機能的な突起となっていたのである。

東アジア一覧へ