詠草(藤原定家筆) 五月雨えいそう(ふじわらのさだいえ)

  • 鎌倉時代
  • 13c
  • 紙本墨書
  • H-26.1 W-30.8

縦 26.1cm
横 30.9cm
鎌倉時代(13世紀)

 藤原定家(1162~1241)の私家集『拾遺愚草』に収められた「五月雨」の一首を二行に書く。歌の頭に見える棒線は、すぐれた作品に付ける評点である「長点」(ちょうてん)。定家の詠草の多くは、本幅とほぼ同様の形式を踏んでおり、長点も多くのものには本幅と同じように付けられている。
 藤原定家は自らの筆跡を表して「鬼」の如し卑下していたが、後代、歌聖としての歴史的評価が確定するにともない、その書は「定家流」としてもてはやされることとなる。特に晩年の肥痩の変化に富んだ書風は、歌人を中心に広く行われている。
 本幅には、晩年に見られるような極端な肥痩の変化は見られず、壮年期に書かれたものであろう。

 藤原定家の私家集「拾遺愚草」に収められた五月雨の一首を二行に書く。藤原定家は自らの筆跡を評して「鬼」の如しと卑下していたが、後代、歌聖として歴史的評価が確定するに伴い、その書は定家流としてもてはやされることとなる。特に晩年の肥痩の変化に富んだ書風は、歌人を中心に広く行われている。本幅は、晩年に見られるような極端な肥痩の変化がないことから、壮年期に書かれたものと思われる。

和歌

平安時代から鎌倉時代初期にかけての和歌などのかなの書は古筆(こひつ)と呼ばれます。本来は古人の筆跡を意味する言葉でしたが、いつの頃からかそう呼ばれるようになりました。王朝文化の精華ともいうべき古筆は、茶席の一幅として、国文学の文献として、そして学書の規範として、非常に価値の高いものといえます。

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読み下し

   五月雨
さみたれの ふるの神すき すきやらて
木たかくなのる ほとゝきすかな