織部瓢絵四方鉢おりべひさごえよほうばち

  • 岐阜県・美濃窯
  • 桃山ー江戸時代
  • 17世紀
  • 美濃陶製
  • H-10 D-23 W-19.3

 四方を強く入隅にした長方形の鉢で、内側は二段になり、見込みの底は撫四方に近い。成形は型を用いているが、量産ではなくむしろ器形の変化をねらったものであろう。多種多様な器が造られている。柔らかな焼成りと緑釉の鮮やかさが見どころである織部の中でもこの鉢は理想的な出来映えで、色濃い鮮やかな緑釉が印象的である。見込みには瓢と唐草の文様が鉄釉で描かれている(挿図)。

桃山-江戸時代 17世紀
高:10.0cm 口径:19.3-22.5cm

四方を強く入隅にした長方の鉢であるが,内側は二段になり,見込みの底は撫四方に近い。言うまでもなくこうした器形は型によって成形されたもので,型を用いることによって当時多様な器の生産が可能になったのである。しかし,当時の型造りは量産を目指したのではなく,器形の変化を狙ってのことであろう。
相対する二方に緑釉を掛け,白地の部分には瓢の文様を鉄釉で描き,外側にも太い唐草文様を配している。織部焼の場合もやはり柔らかな焼成りと緑釉の鮮やかさが見どころであるが,この鉢の焼成りはそうした織部焼の理想を十分に備えたもので,とくに緑釉が濃く鮮やかである。底の四方に美濃物独特の足がつけられ,底全体にも釉が掛けられている。 (赤沼)

美濃焼(みの)

美濃国(現在の岐阜県)の東部地域(東濃地域)で生産されるやきものの総称。その起源は奈良時代の須恵器窯にまで遡り、室町時代末期に瀬戸の陶工たちが美濃に移住していわゆる美濃物と呼ばれる桃山陶器が焼き始められたとされています。


青織部沓向付 志野芒文鉢 黄瀬戸鉦鉢 黄瀬戸輪花向付 織部切落向付 鼠志野向付 志野四方向付 黄瀬戸輪花向付 織部茶入 織部火入 志野傘車輪文平向付

織部(おりべ)

桃山時代の武将で千利休門下の茶人・古田織部(ふるたおりべ)の好みで焼かせたといわれる美濃窯の陶器です。文様や器形に独特のひょうげた意匠と織部釉と呼ばれる濃緑色の釉がその代表的な特徴で、その他黒織部や美濃伊賀など数種のタイプがあります。


青織部沓向付 織部切落向付 織部茶入 織部火入

Catalogue Entry

Momoyama to Edo periods, 17th century
Oribe ware
Height, 10.0cm; mouth diameter, 19.3-22.5cm

This square dish has sharply pulled corners to form an almost quatrefoil form, and its interior has been layered into 2 steps, with the base of the interior in a square flat form with slightly smoothed corners. Needless to say this vessel was mold-formed, and the use of molds during this period meant that a wide variety of vessels could be made. However, the use of molds during this period was not with the aim of mass-production, but rather was part of the potters' desire to create unusual forms in their vessel shapes.
Here green glaze has been applied to opposite corners of the vessel, and a gourd design has been painted in iron underglaze on the white central ground. The exterior of the dish was then decorated with thick karakusa vining plant motifs in underglaze iron. Oribe ware is known for its soft firing and vivid green, and the firing of this dish reflects the ideal results sought in these aesthetics. The green is particularly dense and vivid. Distinctive Mino-ware-style feet have been applied to the 4 corners of the dish's base, and glaze has been applied to the base overall. TA

解説(春の玉手箱)

 四方を強く入隅にした長方の鉢であるが,内側は二段になり,見込の底は撫四方に近い。言うまでもなくこうした器形は型によって成形されたもので,型を用いることによって当時多様な器の生産が可能になったのである。しかし,当時の型造りは量産を目指したのではなく,器形の変化を狙ってのことであろう。相対する二方に緑釉を掛け,白地の部分には瓢の文様を鉄釉で描き,外側にも太い唐草文様を配している。描線は軽妙に見えながら力強いもので、風に踊る瓢箪もダイナミックな器形の内にありながら臆してはいない。織部焼の場合もやはり柔らかな焼成りと緑釉の鮮やかさが見どころであるが,この鉢の焼成りはそうした織部焼の理想を十分に備えたもので,とくに緑釉が濃く鮮やかである。底の四方に美濃物独特の足がつけられ,底全体にも釉が掛けられている。